認知症の高齢者が列車にはねられた事件で,最高裁判所が家族の賠償責任を否定した判決が出ました。
民法上の監督義務者にあたるかどうかは,同居の有無や問題行動の有無,介護の実態を総合考慮して判断すべきとしました。具体的な判断基準を示した点で,大変重要な判決です。
この判断に従えば,同居していない家族は,原則として監督義務が否定されることになるでしょう。そうすると,実家に寄りつかない薄情な家族は監督義務が否定されるという不公平な結果になりそうですが,同居して一生懸命介護していた家族については監督義務を尽くしたとして賠償責任が否定されることになるのではないでしょうか。
結局,家族の監督義務違反が認められて賠償責任を負う場合とは,要介護度の高い高齢者と同居していながらほとんど世話をしなかったような場合になると思われます。